「精神障害者手帳3級を取得したけど、就労する上でのメリットは?」
「精神障害者を雇用してくれる会社ってどうやって見つけるの?」
「精神障害者手帳3級の手帳取得で、働く上でのデメリットはないの?」
精神疾患を抱えながら生活する上で、やはり最も悩む事と言えば就労の悩みですよね。
平成30年4月1日より精神障害者の雇用が義務化され
積極的に採用する企業も増え、年々精神障害者の雇用は増えております。
そこで、今回は精神障害者手帳3級から就労する方に向けた重要なポイントやメリット・デメリット。
さらには、おすすめの企業や利用できる支援機関などもご紹介致します!
当記事では、「精神障害者保健福祉手帳」を簡略的に「精神障害者手帳」と簡略的に呼称しております。
精神障害者手帳3級を就労する上でのメリット
精神障害者手帳3級を所持しながら働く事のメリットとしては、やはり企業側から働く上での症状に対しての配慮がある事が挙げられます。
(これを合理的配慮と言います。以下、合理的配慮と呼称します。)
配慮があると聞けば、
「自分だけ特別扱いされて働きにくいのでは…」
と感じるかもしれませんが、決してそのような事はなく
企業側もあなたを雇用する事で、国からあなたの能力を最大限活用するための助成金なども支給されるため
現在では、企業も積極的に障害者手帳を持っている方を採用しています。
その数は平成30年4月1日に精神障害者雇用が義務化された当初は、6万7000人だった精神障害者雇用は令和4年には11万人と非常に多くの方が活躍されています。
参考:令和4年 障害者雇用状況の集計結果https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_29949.html
さらに、精神障害者雇用の退職率や給与など現状は以下の記事にて詳しく解説しております。
それでは、具体的に一般就労と障害者雇用の違いとメリットについて詳細に解説していきます。
メリット①希望する働き方や業務につける可能性が高い
企業に障害者枠に入る際に
通常の面接では、エントリーシートによる書類選考があり面接に進む点で同じですが、精神障害者雇用の場合は
- 精神疾患の方は就労パスポート
- 発達障害の方はナビゲーションブック
というツールを作成・提出し、これを元に書類選考や面接が進んでいきます。
これらのツールは国(高齢・障害・求職者雇用支援機構)が障害者雇用を行う企業向けに発行しているもので、記載事項には以下のようなものがあります。
- 体調管理と希望の働き方(勤務時間やストレス、休暇)
- コミュニケーションの手段
- 作業の正確性
- 仕事上のアピールポイント
- 職歴や就労支援機関での経験
参考:世界の職業リハビリテーション研究会 第6回「就労パスポート」https://www.nivr.jeed.go.jp/research/advance/p8ocur0000009cox-att/sekai06-5.pdf
などがあります。
これにより、例えば適応障害等により苦手な場面などがあればあらかじめ防ぐ事ができたり、
症状により少し休みながら働きたい場合などは、希望の勤務時間や通院等による定期的な休暇日を設ける事も可能です。
また、コミュニケーションの面でどのような伝え方が必要か
仕事上でどのようなミスが発生するか?などもあらかじめ伝える事ができます。
また作成にあたっては、一人で作成する必要はなく就労移行支援等に通っているならばそのような支援機関と作成するのが一般的です。
通われていない場合はハローワークも作成に協力してくれるので、相談してみましょう。
メリット②職歴や経験をカバーできる。
就職に向けて、精神疾患などにより長期ブランク等がある場合が
ブランクの説明などで就職に二の足を踏んでしまう方も多いと思います。
しかしながら、前述の就労パスポートではこれまでの職場と合わせて
就労支援事業所などで訓練を行なった経験も記載可能です。
面接官も職歴だけでなくその内容を加味して、採用を決定します。
また、その経験を元にして得意であった事などのアピールも可能です。
現在、様々な障害者雇用の支援機関として就労移行支援なども多数あります。
またその中でも精神障害者や精神疾患に特化した機関も多数あり
これらは障害者雇用の面接などのノウハウも多数ありますので、積極的に活用したいです。
メリット③外部機関の介入が手厚い
これまで説明した中で、そうは言ったものの企業は本当に理解してくれるのか?
自分一人で心配な面もあるかと思います。
その場合に活用したいのが、就労定着支援となります。
前述の就労移行支援を利用して、就職を行なった場合
就労支援機関のスタッフが定期的に本人や雇用主と連携を行い、
「職場に定着できているか?」
支援を行います。
さらに、障害者雇用では
雇用主には能力開発の助成金等が支払われている事もあり、
ハローワークや地域障害者職業センター(しゅうぽつ)とも連携を図りながら
「適切な雇用を実現できているか?」
をチェックされる立場にあります。
従って、障害者雇用は決して一人で行うものではなく、
その障害を多数の支援者で支えあいながら十分な力を発揮できるようにサポートしていきます。
企業としても、雇用した以上
能力を最大限発揮してもらわなければならないためです。
メリット④公務員など障害者枠で応募できる
障害者雇用は民間の企業で約61万4000人となっていますが、実は
公務員として働く障害者の方は約8万4000人存在しています。
参考:令和4年の障害者雇用データより、国・都道府県・市町村・独立行政法人・教育委員会で働く障害者の合計から筆者が作成。
国も民間企業と同様に、法定雇用率2.8%が義務付けられています。
つまり、障害者枠の公務員試験は障害者のみが応募できる形となっております。
もし、公務員を目指される方は障害者枠の公務員対策を専門に行なっている就労移行支援もございますので、
積極的に活用したいところです。
メリット④障害者枠によって志望の企業に入れる場合がある。
国の法定雇用率では2.8%と定められていますが、それ以上に障害者雇用に積極的な企業もあります。
例えば、ユニクロやGUでお馴染みのファーストリーディング社。
こちらは障害者のお客様目線でサービスを提供できるという観点から、
法定雇用率はなんと4.89%(2023年6月1日時点)と規定の倍近い障害者雇用を行い店舗責任者等に積極的に配置しております。
参考:ユニクロ障がい者雇用
https://www.uniqlo.com/jp/ja/contents/sustainability/people/diversity/pwd/
続いては、無印用品でお馴染みの良品計画。
こちらも3.23%と非常に高い水準となっており 障害者のみならず女性の活躍など多様性全体に力を入れております。
また、発達障害の雇用は特に有名で
参考:日経BP「発達障害社員は店舗で活躍できる―良品計画「ハートフルプロジェクト」の新展開」
https://project.nikkeibp.co.jp/HumanCapital/atcl/column/00047/011100008/
個性を生かした結果、能力の高い社員はハートフル社員から一般社員への社員区分変更も提案されます。
他にも障害者雇用率が高い企業として、avex株式会社では
”志”チャレンジ採用というものを行なっております。
https://hrmos.co/pages/avex/jobs/0000032
障害者雇用では、障害者専用の合同面接会なども定期的に行なっており
情報が非常に重要となります。
そのため、自身が就職したい企業や業界などがあれば
その実績のある支援機関の力を活用するのが良いでしょう。
参考:東洋経済「障害者雇用率が高い会社」ランキングTOP100社
https://toyokeizai.net/articles/-/620319?page=4
精神障害者手帳3級を取得し就労する上でデメリットはあるのか?
ここまで就労する上でのメリットなかりを並べてきましたが、今度はデメリットについて
解説していきたいと思います。
まず結論としては、取得する事自体にデメリットは一切ありません。
しかしながら、
「働いている途中で、障害者手帳を取得した場合どうなるんだろう?」
と不安な方もいらっしゃるかと思いますので、解説していきます。
働いている途中で精神障害者手帳3級を取得した場合
まず、働いている途中で障害者手帳を取得した場合、職場に申告する必要があるのか?
という点については
申告する必要はありません。
利用したい時のみ利用し、常に携帯する必要もありません。
仮に職場に発覚しても、障害者差別解消法により障害を理由とした解雇は禁止されています。
さらに万が一発覚した場合も、
採用後に精神障害者となった場合の調査結果では特段、不利益を行なっている企業はありません。
従って、取得自体は自身が精神障害者手帳3級の基準にある場合は
障害を感じた時だけ利用すれば良いので、積極的に取得すると良いでしょう。
参考:厚生労働省:平成30年度障害者雇用実態調査
https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/000521376.pdf
希望した業務と大幅に異なる
しかしながら、注意したい点はあります。
あらかじめ断っておきたいのですが、働く本人が望んでいるのなら全ての雇用は構わないのですが、
最近、問題にもなっている障害者雇用の罰則金を逃れるために、
貸し農園などを利用した農業に従事させられる場合等があります。
あらかじめ、しっかりと企業について調べた上で面接などを行うようにしましょう。
精神障害者手帳3級の取得後の注意点
精神障害者手帳3級を取得した後の注意点としては、手帳には有効期限があるということです。
精神障害者手帳の有効期限は2年間となっています。そのため、2年ごとに更新が必要です。
更新の手続きの流れは、有効期限の2~3か月前に通知がくるので
- 手帳に記載されている期限までに必要書類を揃える
(申請書・顔写真・印鑑・マイナンバーカード・身分証明書・手帳更新用診断書等) - 自治体の障害福祉窓口などで申請を行う
- 約2か月ほどで手帳が交付され、障害福祉窓口で受け取る。
万が一更新を忘れてしまった場合は手帳に記載されている担当部署に忘れていたことを連絡し、再発行をお願いしましょう。
精神障害者手帳は、身体障害や療育手帳と違い、症状の緩和や軽減・重症化が比較的短い期間にみられるため、2年ごとの再認定が行われます。忘れずに更新しましょう。
更新で大切なことは、医師の診断書が必要になるということです。
障害者手帳を取得し、障害者雇用で就職している方は特に、症状が緩和・軽減、断薬した場合でも障害者雇用を継続する場合は2か月に1度だけでも受診しましょう。
前回の申請から現在までの経過を主治医が診断書に記入をしなければならないので
定期的に通院をしていないと、更新のタイミングで2年間の経過を報告しなければならなくなります。
また、更新ができないと障害者雇用を継続することができなくなるため注意が必要です。
精神障害者手帳3級ってどの程度?
精神障害者手帳3級を取得し就労する事について解説してきましたが
ここまで、障害者雇用を目指す場合に自身がその基準を満たしているか疑問の方もいらっしゃるかと存じます。
この項では、どの程度の人が精神障害者手帳3級と認められるのか解説致します。
より詳しくは以下の記事で解説しております。
精神障害者手帳3級の対象者
まず、対象者ですが
「精神疾患の初診日から6ヶ月以上経過し、その精神疾患により日常生活に制限がかかっている人」
となります。
申請には以下のような医師の診断書と申請書が必要となり、
これらを合わせて市町村の障害福祉課に申請を行います。
主に以下の4つの点から、精神障害者手帳の等級が判定されます。
- 精神疾患の存在の確認 (精神疾患があるかないか?)
- 精神疾患の状態(機能障害) (精神疾患の疾患別の程度)
- 能力障害(活動制限)の状態(生活を送る上での障害の程度)
- 精神障害の程度の総合判定 (②③を加味した障害の程度)
①「精神疾患の存在の確認」については、医師により精神疾患と認められるかどうかが基準となります。
②「精神疾患の状態(機能障害)」については、その精神疾患特有の症状が認められるかが基準となり、
例えば、うつ病(気分障害)であれば
「気分、意欲・行動及び思考の障害の病相期があり、その症状は著しくはないが、これを持続したり、ひんぱんに繰り返すもの」
と主治医より認められる必要があります。
③「能力障害(活動制限)の状態」については、精神疾患によりどの程度、日常生活・社会生活に障害が生じているかが基準となります。
具体的には、
- 食事
- 清潔
- 通院/服薬
- 家族/知人関係
- 市役所等の手続き
- 趣味・娯楽への関心
の項目でどの程度、障害が生じているかが基準となります。
最後に④「精神障害の程度の総合判定」では、②③を加味した障害の程度が医師により診断されます。
3級の基準としては、診断書の以下の項目において
「精神障害の状態が、日常生活又は社会生活に制限を受けるか、日常生活又は社会生活に制限を加えることを必要とする程度のもの」
にチェックが入っている必要があります。
精神障害者手帳3級の所持する上メリット
精神障害者手帳3級を所持する事で就労以外にも様々なメリットが存在します。
障害者雇用での就労と合わせて、これらを上手に活用する事で生活費などの金額が安く抑えられるメリットがあります。
より詳しくは以下の記事で解説しております。
精神障害者手帳3級に対する割引サービス
精神障害者手帳3級を提示する事で安くなるサービス代表といえば、携帯電話料金が挙げられます。
例えば、DOCOMOのハーティ割引では平均した約1,500円程の基本料金の割引が適用されます。
また、タクシーでは一律10%引きの値引きがされ他にも飛行機や船舶でも割引が適用されます。
精神障害者手帳3級に対する公共サービス
障害者手帳を取得することで、障害福祉サービスという福祉サービスを受ける事ができます。
より詳しくは以下の記事で解説しております。
こちらは、精神障害者手帳の等級とは別に
障害支援区分という、障害の程度に応じた区分が認定され
それに応じて様々な福祉サービスを利用できます。
例えば、精神障害者手帳3級と関わり深いのが
居宅介護と言われるホームヘルプサービスです。
精神疾患の病相期などで、掃除や洗濯などの家事が難しい場合、ヘルパーが自宅に来てくれて日常生活の手伝いを行なってくれます。
他には、行動援護といって統合失調症やパニック障害等により、一人での移動が難しい場合などは付き添いを行なってくれます。
また一人での生活が難しい場合は、共同生活援助という
世話人や生活の支援員などがあらかじめ配置された福祉住居に住むこともできます。
精神障害者手帳3級の医療費負担
医療費の面では、自立支援医療(精神通院医療)が利用できます。
こちらは精神障害者手帳なくとも初診日より申請する事で利用する事ができます。
制度の概要としては、医療保険の負担額が一律10%となり
月ごとに医療保険利用時に所得によって定められた上限の自己負担額まで達するとそれ以降の医療費は無料となります。
所得別の自己負担額は以下の通りとなります。
世帯基準 | 月額上限自己負担額 |
生活保護世帯 | 0円 |
町村民税非課税世帯で障害基礎年金2級(月6.6万円)のみ受給程度 | 2,500円 |
市町村民税非課税世帯 | 5,000円 |
市町村民税課税で市町村民税額(所得割)が2万円未満 | 5,000円 |
市町村民税額(所得割)が2万円以上20万円未満 | 10,000円 |
町村民税額(所得割)が20万円以上 | 20,000円 |
https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/jiritsushienhou04/
精神障害者手帳3級の就労についてのまとめ
精神障害者手帳を取得するだけならば、特にデメリットもありません。
また、自身が精神疾患や発達障害を抱えながら生活していく上で
必要なサポートや障害者雇用という選択肢も開かれていきます。
ご自身の特性に合わせて積極的に活用してみてください。
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